十勝Z団(トカチゼットダン)

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2020年12月21日。大樹町で民間ロケット開発に取り組んでいる、宇宙ベンチャー「インターステラテクノロジズ(以下IST)」の、新社屋ロケット組立棟が完成。 そして、同社は⽇本初の“ロケット × ⼈⼯衛星”の統合サービスを開発するための新会社「Our stars(アワー・スターズ)」の設立を発表。 これに合わせて開かれたスペシャルトークセッションの様子をレポートします!

トークセッションには、IST創業者の堀江貴文さん、モデレーターとして同社社長の稲川貴大さん、そして元JAXA宇宙飛行士の山崎直子さんがオンラインで参加。 「2021年の宇宙産業を語る」と題し民間宇宙開発の未来を熱く語りました。

左から堀江さん、山崎さん、稲川さん

トークセッション

2020年を振り返る~民間宇宙開発

(稲川さん) 今年は民間宇宙開発で色んな動きがあった1年になった。なかでも、米国商業有人宇宙船「クルードラゴン」(SpaceX社/アメリカ)に宇宙飛行士の野口聡一さんが搭乗し、国際宇宙ステーションに行ったというのが、一番大きな出来事だった。民間のロケットで宇宙空間に行けるようになったという時代の変化を感じる年だった。

(堀江さん) 「クルードラゴン」には宇宙飛行士だけでなく、これから観光客を乗せることになる。これまでは、ISS(国際宇宙ステーション)に人を送ること自体が大変と言われていたが、一気に流れが逆転した。宇宙旅行はまだまだ費用は高いが、同機の登場でこれから価格も下がっていくと予想できる。

(山崎さん) これまでの有人宇宙船は、国の所有だったが「クルードラゴン」は民間の所有。同機は7人乗れる仕様で、そのうち4席をNASAが契約、残りの3席は自由に使うことができる。来年の後半に米俳優のトム・クルーズさんが同機に乗って、ISS(国際宇宙ステーション)で映画を撮るという話もある。

増える人工衛星、足りないロケット

(稲川さん) 最近、日本経済新聞社が「工事スタート後に地盤沈下」という記事を書いたが、これは衛星から撮った画像を時系列に見て変化に気付いたというものだ。これまで国や自治体だけが「宇宙」を使っていたが、新聞社というひとつの民間企業が衛星技術を独自に活用した事例となった。

(山崎さん) 最近行われた「宇宙開発の認知度」についての意識調査では、GPSなどの人工衛星の認知度は8割、リモートセンシングや災害時のモニター、バックアップ回線や通信に関しては4割程しか認知されていないとの結果が示された。色々な場面で宇宙の技術が使われているということがもっと広く認知されれば、これから面白くなっていくと思う。

(堀江さん) 実際にロケットを1回打ち上げて実証実験をやると何十億円という費用がかかる。これまでも人工衛星を使った面白いアイディアはたくさんあったはずなのに、ロケットが飛ばせず試せていないのが現状。そこがボトルネックになっている。

なぜ北海道でロケットを打ち上げているのか

(堀江さん) (地球の自転の関係上)ロケットは基本的に「東」、「北」、「南」に打ち上げる。大樹町は太平洋に面しており、東と南に打ち上げることができる。人があまり住んでおらず、空路や海路も混み合っていない。この様な地理的条件を満たしている国は本当に少ない。

(山崎さん) SpaceXも、これまではフロリダでは東にしか打ち上げることができなかった。大樹町のように、いろんな軌道で自由に人工衛星を打ち上げできることは、たくさんの種類の人工衛星を打ち上げられるということ。これはとても大きな魅力。また、小型人工衛星の使い方は様々で、農林水産業様々な分野で応用が効く。例えば北海道の場合は、衛星から近赤外線センサー等で「お米」のタンパク質をモニターすると、最適な収穫時の判断や、肥料投入量の調整ができて、収穫の「量」と「質」が向上する。

人工衛星は国だけが持つ時代ではなくなってきている。すでに福井県が「県民衛星」を作っている様に、北海道の「道民衛星」ができてもおかしくない。

2021年の宇宙産業はどうなる?

(堀江さん) 今後、産業構造の変化が来ると思っている。特に世界的な波として自動車産業のEV化が進み、マーケットは激変する。EVはアメリカや中国が圧倒的に先を行っており、日本は難しい。しかし、エンジン技術などの日本の自動車技術は、宇宙産業に活かせる。その点でも宇宙産業は日本がアドバンテージのある数少ない産業。日本にとって大きな産業になるので、かつてインターネットが普及した時以上に国の関与があっても良いと思う。産業構造の変化は大きなビジネスチャンス。

(山崎さん) アジアやアフリカなどでも人工衛星を保有する国が増えている。重要なのは、輸送で地理的に有利な日本が、「アジアのハブ」になることが大切になる。輸送と人工衛星をパッケージにして、宇宙のソリューションを提供できれば、日本の強みを発揮できるようになると期待している。

スペースポートの世界情勢

(山崎さん) 人工衛星に様々な用途があると同時に、「スペースポート(宇宙港)」にもそれぞれの役割がある。5年前から世界中の関係者が集まり「スペースポートサミット」が開催されている。これから日本も各地の特色を活かした民間のスペースポートを作ることが大切になる。

(堀江さん) 日本でも有数の晴天率を誇る北海道・大樹町は降水量も少なく、さらに東南海上が開けていてるので地理的にもロケットも打ち上げやすい。世界でもスペースポートに最適な地といえる。

また、物流の面でも高速道路が整備されていて、土地も広いので宇宙産業がここにサプライチェーンを作ることができる。ここからロケットがバンバン打ち上がる様になると、搭載するペイロードも増えて、人工衛星を作る会社が進出してくるんじゃないかなと思う。

インタビュー

最後に堀江さんに、スペースポートが十勝にもたらす経済面での影響について聞いてみました。

(堀江さん) スペースポートができれば理論的には、「SpaceX社」(従業員8,000人)の規模になってもおかしくない。数千人がIST関連企業で働くうえにそのご家族がいて、さらに周辺には衛星を作ったり部品供給する会社が立地し、一大サプライチェーンが作られていくことが予想できる。町が1個できるくらいの影響があるのではないか。

最後に

大樹町が「宇宙のまちづくり」を掲げ宇宙産業基地の誘致運動をはじめたのが、今から35年前(1985年)のこと。 以降、様々な宇宙産業の取り組みを進めてきたこの町の歴史に、今回の「ISTの新社屋・ロケット組立棟完成」が加わりました。

日本の民間宇宙産業をリードする「インターステラテクノロジズ(IST)」、そして新たに設立された「Our stars」の動向から目が離せません!