とかちABCプロジェクト

文部科学省地域イノベーション戦略支援プログラム(都市エリア型)(発展) 食の機能性・安全性に関する高度な技術開発とその事業化によるアグリ・バイオクラスターの形成
とかち元気食

共同研究テーマ

テーマ1 農畜産物及び加工副産物からの新規機能性素材開発

概要

十勝の農畜産物資源から産み出すことのできる高付加価値の素材とは?

この事業は、平成17~19年度の3年間、都市エリア産学官連携促進事業(一般型)に取り組んで、様々な成果を出してきました。そして、平成21年度6月より地域イノベーション戦略支援プログラム(都市エリア型)(発展)に採択され、引き続き事業を進めています。
これまでの成果を活かし、新たな素材の開発・製品化に取り組んでいます。
研究テーマ1で課題としているのは、「ベタイン」・「動物性ペプチド」・「イヌリン」・「小豆ポリフェノール」を主とした素材の研究・商品化と、他の農畜産物資源から機能性素材を見出す「可能性試験」の実施です。
これらの素材は、健康食品や化粧品・加工食品などの幅広い利用が見込まれ、市場での需要、十勝における生産・製造の有意性からみても有望です。
本事業では、原料の栽培方法の検討、素材の抽出・製造方法の確立、健康機能性と品質特性の評価、そして事業化・商品化に取り組みます。



ベタイン

砂糖の原料であるビート(甜菜)は、その全国収穫量の42%が十勝で収穫されています。
(H22. 十勝総合振興局統計より)
ベタインは、ビートから砂糖を製造する際に、副産物となる糖蜜から回収されています。このベタインは、水産加工品や化粧品などに多く使われていますが、最近では、様々な健康機能性があることが解明されており、今後は多岐にわたる需要の伸びが期待されています。
平成20年の時点では国産砂糖は、供給過剰の状態であることから、糖蜜からの回収には限度があり、ベタインの生産量を増やすのは難しい状況です。
そこで本事業では、ベタインの効率のよい抽出方法の確立と、新たな効果として健康機能性と品質特性の解明を目指しています。

  • 健康機能性
    肝機能改善効果・脂肪肝抑制効果
  • 加工食品への利用特性
    保存性向上・味質向上
    熟成感付与・砂糖置換による褐変低減
    食感向上・風味向上
    塩分の抑制・旨味浸透
ベタイン


動物性機能性素材:エラスチン

動物性機能性素材:エラスチン動物性ペプチドは、保湿成分やアンチエイジング素材として、化粧品やクリームなどの他、健康食品としても非常に期待される素材です。
十勝では年間約4万5千頭の豚がと畜されていることから、生産地として非常に優位です。
本研究では、畜産加工副産物から得られた動物性ペプチドの様々な健康機能性を解析しています。

  • 健康機能性
    脂質代謝改善
    腸内環境改善


イヌリン

イヌリンイヌリンは、血糖上昇抑制や脂肪代謝など、様々な機能性が示唆されている、水溶性食物繊維です。
ヨーロッパでは、天然イヌリンはすでに年間30万トン以上が生産されていますが、日本ではまだ生産されていません。
イヌリンの原料となるチコリは、北海道・十勝の主要農産物であるビート(甜菜)と、形状や栽培方法が類似しており、イヌリン精製方法においても砂糖の精製方法と大きく違わないことから、十勝地域での安価な大量生産が期待できるとともに、新たな産業創出に繋がる可能性があります。
日本で作られているイヌリンは合成イヌリンであるため、平均に重合度が低く、また天然イヌリンは平均重合度が高い特徴があります。重合度の分布に注目することで様々な食品への利用が期待できます。
本事業では、チコリの栽培技術の確立・天然イヌリンの製造方法の確立を目指すとともに、さらなる健康機能性と品質特性の解明を行っていきます。

  • 健康機能性
    低カロリー・整腸作用・糖質代謝改善・脂質代謝改善
    腸内環境改善・腸管免疫システムの増進
  • 加工食品への利用特性
    味質向上・物性改良
    食感向上・離水防止
    脂肪代替・食物繊維付与


小豆ポリフェノール

小豆ポリフェノール小豆には、たくさんのポリフェノールが含まれていますが、製餡の過程でその大部分が煮汁に出てしまいます。
以前の事業では、その煮汁からポリフェノールを抽出する技術を開発しました。それが「あずきエキス(あずきの素)」です。
本事業では、あずきエキスの健康機能性と品質特性の解析を進めています。

  • 健康機能性
    脂質代謝改善
  • 加工食品への利用特性
    色調付与・色調保持・食品の脂質酸化抑制


可能性試験

私たちは、現在のテーマ素材の開発に留まることなく、絶えず新たなテーマを模索し、その可能性についての研究を行っています。「可能性試験」は、地域の企業や大学・公設試からニーズ・シーズを掘り起こし、十勝に眠る農畜産物の可能性を発掘する「十勝型アグリ・バイオクラスター」の実現には欠かせないテーマです。随時、素材の市場動向を把握し、進捗状況によって見直しをしています。
現在実施しているテーマは、

  • 難消化性ばれいしょデンプン
    ばれいしょデンプンは北海道の特産品です。
    コーンスターチやタピオカでんぷんなどとの機能性(レジスタントスターチ)の違いを明確にして、ばれいしょデンプンの有意性を明らかにすることを目指しており、脂質代謝改善や腸内環境改善効果について検証しています。


  • 十勝産マッシュルーム
    十勝では、ばんえい競馬の厩舎から出る馬糞および敷わらを利用した、本格的なマッシュルーム栽培が行われています。
    とかちABCプロジェクトでは、マッシュルーム自体が有している総合的な成分組成がもたらす、腸内環境改善効果など健康機能性について検証しています。


  • 十勝産抗酸化能素材
    抗酸化活性が高い食材は、アンチエイジングなどの効果が期待されています。本テーマでは十勝産農産物を対象とし、ORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity)測定による抗酸化能評価を行っています。この結果をもとに、抗酸化作用が期待される食材についてPR強化を行い、消費拡大を目指します。
難消化性ばれいしょデンプン
十勝産マッシュルーム
十勝平野
十勝産抗酸化能素材

生産者・企業・研究者の皆様からのご提案をお待ちしています。

可能性試験アイディア募集



テーマ2 農畜産物及び加工品の安全性確保

概要

検査技術の確立とノウハウの蓄積で、地域内外のニーズに応える。

O157、BSE、農薬混入、産地偽装、賞味期限改ざん・・・食の安心・安全が脅かされる事件が相次いでいます。
消費者の関心と要望に対し、食品製造・販売者は自主検査体制の強化が求められています。
当事業では、1次産品、2次加工品に含まれる食中毒菌の他、人獣共通感染症、家畜の有害菌を検出するため、「カクテルPCR法」技術や、複数種微生物の同時増幅法のほか、VBNC菌の検出法、細菌毒素および病原菌の直接同定技術などの開発を行います。
その開発の中で確立される技術を活かし、簡易検査キットの製品化「食品検査ラボ」の設立など、地域における食の信頼性を高めるとともに、国内外からのニーズにも応えていく計画です。

※以下の研究内容については、近日公開予定です。



カクテルPCR法による有害細菌の検出


(リアルタイムPCRシステム)
食中毒菌を含む有害菌検査の一般的な検出方法としては培養法が主流であり、その検出時間はおおよそ2~7日間を要します。
また、既存のPCR法では3~4菌種を同時に検出できますが、検出感度が劣ります。
本事業では、カクテルPCRを用いて短時間で複数の食中毒菌を感度良く検出する技術を開発します。
同時に、前処理技術の開発、検出菌の同定技術の開発、食中毒菌を効率よく検出できる検査キットの開発も視野に入れています。
さらに、食中毒菌だけでなく、その他の有害菌(人獣共通感染症、家畜の有害菌)検出技術の開発も行っていきます。



UFP増菌法

従来の検出法では検出したい菌に応じて異なる増菌培地が必要ですが、UFP(Universal Food Pathogenic enrichment)増菌培地は、1種類でさまざまな食中毒菌の増菌が可能となります。



質量分析計による細菌の迅速同定

マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-TOF/MS)は、細菌細胞中のタンパク質や脂質などの構成成分を詳細に解析できる手法として注目されています。質量(MS)スペクトル上に観測される成分のピークパターンから、菌種を迅速かつ簡単に同定することができます。


微生物のタンパク質ピークのパターンマッチングを行って微生物種まで同定

質量分析計(MALDI-TOF-MS)


VBNC菌の検出

病原体が“生きているが培養できない”(Viable But Non Culturable、VBNC)状態へ移行すると、培養を基本とした通常の検査法では検出できません。食中毒菌の一部は、低温や乾燥状態でVBNC状態になることが分かっており、その蘇生因子の解明を進めています。



免疫学的迅速同定法による細菌毒素の検出

細菌性食中毒は、感染型と毒素型食中毒に分類され、食品中に毒素を産生する菌や毒素が混入していると、ヒトの健康に被害を及ぼします。
細菌性毒素は、ほとんどがタンパク質であり、毒素を認識する抗体を利用した、免疫学的迅速同定法の開発を行っています。




とかちABCプロジェクトの機能性・安全性評価の要 食品検査ラボ

「食品検査ラボ」は、研究テーマ1・2で構築された機能性評価や、検査技術の研究成果を活用した、食の機能性・安全性評価の仕組み作りとして設立しています。

機能性評価では、農畜産物や副産物を素材にした機能性成分の解析や、機能性の解明での受託評価および解析結果のデータベース構築が進められ、地域における機能性素材の開発に役立てられています。

安全性評価では、「カクテルPCR」技術を中心とした研究テーマ2の研究成果を活用して、市場ニーズの高い食品検査技術のノウハウ蓄積および技術開発を進めています。衛生管理に対するコンサルタントを含め、地域から流通する「食」の安全性を確保するものです。
簡易検査キットの製品化や、民間の検査機関との連携を図りながら、総合的な検査体制を構築・確立します。

機能性評価
  • ジャーファーメンター(微生物培養装置)
    動物(豚)の腸内環境を再現し、食品サンプルによる腸内細菌の変動や脂質代謝の影響などを評価することで機能性解析を行います。
    分析項目例:腸内発酵、脂質代謝改善
  • アミノ酸分析装置
    食品サンプルのアミノ酸組成を分析し、食品中の成分確認や食品加工での成分変化を評価し、製品開発に役立てます。
    分析項目例:遊離アミノ酸、アミノ酸組成(加水分解)
  • 成分解析(DNAマイクロアレイ、HPLC・GCなどによる成分分析)
  • 機能性解析
    (細胞実験・動物実験での脂質代謝改善、肝毒性抑制、抗酸化酵素活性、消化酵素活性など)


安全性評価
  • カクテルPCR
    複数の病原菌を同時に、かつ短時間で分析することで、食品衛生検査の迅速化を目指しています。
    分析項目例::病原体検査
カクテルPCR以外の検査アプローチとの組み合わせで検査精度の向上を目指す。


食品検査ラボに求められる役割

English Page(PDF)お問い合わせ

テーマ1

テーマ2

食品検査ラボ