十勝Z団(トカチゼットダン)

公益財団法人とかち財団

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11月10日に開催された、十勝から起業家を創出するためのプログラム「とかち・イノベーション・プログラム2022(TIP8)」の最終発表会「事業化支援セッション」をレポートします!

とかち・イノベーション・プログラム(TIP)とは
十勝での新事業創造を目指す参加者が、セッションを通して「仲間」を見つけ出し、事業プラン発表までを支援するプログラム。
2015年に第1期が実施され、今年で8回目となる同プログラムには30人が参加。十勝での新事業創造を目指した参加者らは、自身の心の奥に秘めた想いを具現化するため、セッションを通して「仲間」を見つけ出し、事業プラン発表まで辿り着きました。
このプログラムから2021年の第7期(TIP7)までに合わせて58事業、13の会社が立ち上がりました。

主催:帯広信用金庫
共催:十勝19市町村
協力:株式会社日本政策金融公庫帯広支店、株式会社商工組合中央金庫帯広支店、帯広商工会議所、一般社団法人中小企業家同友会とかち支部、公益財団法人とかち財団、信金中央金庫、株式会社野村総合研究所
協賛:松井利夫(株式会社アルプス技研 創業者 最高顧問)、敷島製パン株式会社、フジッコ株式会社、サッポロビール株式会社北海道本部、富士通Japan株式会社北海道支社帯広支店、アース環境サービス株式会社札幌支店帯広出張所

今年で8期目となった「とかち・イノベーション・プログラム2022(以下TIP8)」では、7つの事業構想が誕生。最終セッションでは、5ヶ月間に及ぶプログラムでブラッシュアップされた7事業案がリアルとオンラインで経営者や投資家に発表されました。

帯広信用金庫・専務の八木さん

冒頭、主催者を代表して登壇した帯広信用金庫八木智専務は「十勝地域に新たな事業の芽を創出することを目的にはじまった『とかち・イノベーション・プログラム』も8回目を迎えました。過去に発表された構想は、今や地域の看板事業や十勝の中で根付いている事業がたくさんあり、主催者として誇りに思います。毎年のことではありますが、参加者の皆さんは、大変な思いをしながら時間を割き、約4ヵ月間を走り抜き、今日という集大成を迎えました。7チーム全員に、全力で発信してほしいと思っています」と激励しました。

野村総合研究所・TIP8事務局の大江さん

主催者挨拶後は、同プログラムを開発し、TIP8の事務局を担当した野村総合研究所大江さんから、改めて「とかち・イノベーション・プログラム」について説明。 その中で、大江さんは「TIPは実質、4ヶ月という短い期間で事業構想を作り上げるのですが、個人のうちに秘めた想いを引き出し、アイデアを事業構想までに落とし込むのがTIPの役割であり、起業の一歩手前までを支援するプログラムです」と話した上で、TIPの実績について、「これまで7回のTIPで58の新規事業構想が生まれましたが、最大の功績は十勝にのべ300人以上の起業家コミュニティを作ったことではないでしょうか。今回も抱え切れないほどの熱量が投資家や視聴者の皆様を襲うかと思います」と熱く説明しました。

いよいよ、ここからがTIP8の7つの事業構想が発表されます。

4ヶ月間の集大成として未来の起業家が事業構想を発表

「エンタメ×カーリング」

チーム名グッドカーリング
リーダー大野福公さん
メンバー池田美奈子さん/小正茂樹さん/佐藤賢一さん

トップバッターは、エンターテイメントとカーリングを融合して新たな価値を創出し、新市場の開拓・拡大を目指す「エンタメ×カーリング」です。 チームリーダーの大野さんは、地元帯広出身であり、カーリングの元日本代表。チーム「グッドカーリング」では、大野さんに共感した池田さん、小正さん、佐藤さんらがサポート。

十勝は日本のカーリング発祥地でありながら(1977年に池田町が日本ではじめて取り組んだ)、認知度が低いことをなんとかしたいと、本場カナダや世界のカーリング文化を体感してきた経験を生かし、エンターテイメントでカーリングの楽しさを普及させるビジネスプランを発表しました。SNSやYouTubeといったデジタルメディアプラットフォームを活用しながら試合観戦の楽しさを伝え、そこに現実の世界での体験観光や研修とをつなげることで、カーリングを観て興味を抱いた人たちに、体験を通じて楽しさを実感しもらう流れを創出。メディア広告と体験観光のほかには、カーリングファンが欲しがる、グッズやゲームなどのノベリティで収益も得る事業プランを語りました。

事務局サポーター:浜田さん(帯広市経済部)
「世界で戦ってきた大野さんの経験から生まれた事業です。多彩なチームメンバーの支えがあってこそ、大野さんの経験を生かせると信じていました」

「No.1オぺ」

チーム名わんおぺfamily
リーダー原田志麻さん
メンバー野々村尚美さん/佐藤賢一さん/鈴木可奈さん/蒲生智衣さん

続いて、「わんおぺfamily」リーダーの原田さんは、家族が仕事で家にいないワンオペレーションで子どもを育てる多くのママさんやパパさんの孤独を払拭させる、皆が楽しいコミュニティ形成の事業化を宣言。
地域の飲食店やサービス業、シニアなどが、「わんおぺコミュニティ」を通して、商品、スキル、サービスを提供。利用者のパパ、ママが一定の対価を支払うことで、イベント参加や商品・サービスを享受できる仕組みを考案しました。原田さんは、「お母さんと子どもを笑顔にするコミュニティ事業とワンオペ育児をポジティブに変換できる活動を続けたい」とこれまでのイベント開催経験を生かして、スポンサーを募り、事業化させたいと訴えました。

事務局サポーター:相部さん(帯広市経済部)
「このチームは、収益よりも、育児を前向きなものとして明日につなげることが大事としてきました。関わる笑顔の輪を広げてほしいです」

「トカチメイド(tokachimade)」

チーム名トカチメイド(tokachimade)
リーダー西島圭子さん
メンバー藤浦有希さん/千葉恵里さん/佐藤賢一さん

3番手のチーム「トカチメイド」は、十勝出身で現在は札幌に拠点をおくグラフィックデザイナーの西島さんがリーダー。西島さんは「私の強みは、十勝出身であることで外(札幌)から客観的に十勝を俯瞰できる点です」と話します。
西島さんは、得意のデザインを生かして、2009年から十勝のお菓子屋さんを掲載した「菓子王国十勝」というスイーツマップを発刊。発行部数は5万部で、これまで400件以上のお菓子屋さんの情報を発信してきました。
メディアを運営するなかで、気づいたのが「十勝は圧倒的に質の良い素材(乳製品、小麦、果物、砂糖、小豆)を生産しているのに、その特別な状況を享受できていない」という課題。そこで、お菓子屋さんと消費者の接点づくりをすることを目的に、WebメディアやSNS・これまでなかったイベントなどの横展開を図ることで、十勝のスイーツファンを全国に作りたいと意気込みました。

事務局サポーター:人見さん(帯広信用金庫)
「十勝のお菓子の魅力を知れました。ありそうでなかったお菓子に関係する事業構想です。実行力と覚悟が備わっているチームだからこそ実現できると信じています」

「超十勝美食倶楽部」

チーム名超十勝美食倶楽部
リーダー杉山雅則さん
メンバー小正茂樹さん/六郎田瞳さん/酒井麻子さん

「超十勝美食倶楽部」チームリーダーの杉山さんは、テレビ東京のビジネス番組「カンブリア宮殿」でも特集された十勝を代表するパン屋「満寿屋商店(ますやパン)」の代表取締役です。
「超十勝美食倶楽部」は、読んで字の如く、これまで十勝になかった特別な食事会の企画運営を行うプロジェクト。提案する今まで十勝では体験できなかった食事会は、十勝産食材の旬の極みと題して、生産者と料理人が料理をプレゼンのごとく振る舞い、高度なホスピタリティのほか、十勝だけのロケーション、会場装飾アートや生演奏など、他の地域では真似のできない最上級の食事会を企画するというもの。
杉山さんは、ミシュラン星付きレストランが密集する世界屈指の美食の街サン・セバスチャン(スペイン)を引き合いに、「同じような人口で、しかも食の宝庫である十勝ができない理由はない」と世界屈指の美食地域として十勝を発信していくと発表しました。

事務局サポーター:小野寺さん(事務局推進チーム)
「十勝産100%の小麦でパンを製造・販売して10年が経った、ますやパンの杉山さんだからこそ生まれた構想で、その魅力に惹かれたメンバーが集まりました」

「からだづくりのトレーナーが十勝の農業に貢献できること」

チーム名TO勝ち・体づくり
リーダー折笠恵さん
メンバー三上陽子さん/山田大介さん

日本の食糧庫であり農業王国・十勝を支える農家(生産者)に熱い視線を注いだのが、アスリートフード市場の開拓と、農業に特化したトレーニングで事業化を目指す折笠さんです。日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーでもある折笠さんは、これまで未就学児から90代、アスリート・モデルなど、幅広くトレーニング指導をしてきました。現在は、千葉と十勝の2拠点生活をしながら、十勝の生産者の体を心配。「生産者が元気に働ける環境をつくることで日本の食を支えたい。そして、農業王国だからこそ、アスリートフードを開発し、未来のアスリートを支えたい」と自らの経験と農業をかけあわせる事業を発案しました。
十勝の食材を生かしたアスリートフード開発は、会員制できめ細かいカウンセリングのもとにアスリートに適した食の提案が受けられます。また、一見、健康にみえる生産者の多くが、農業従事者だからこその体の悩みを抱えているそうです。
そこで、十勝の農業者の健康レベルアップを図るために、コンディショニングやリハビリテーションなど、プロだからこそ指導できるトレーニングサービスを提供。十勝の農業生産者がいつまでも元気に働ける環境をつくることで、日本の農業を守りたいと述べました。

事務局サポーター:角畠さん(事務局推進チーム)
「リーダーの折笠さんは、実際に農業に従事するために千葉と十勝の2拠点生活を始めています。農業に携わることで生産者に貢献したいという思いから生まれた事業構想です。是非とも実現してほしいと思っています」

「学び舎とかち商品開発ねお」

チーム名学び舎とかち商品開発ねお
リーダー真浦綾子さん
メンバー山田大介さん

生徒ファーストを徹底する池田高校の先生との出会いから、地域の大人と交流する経験を作りたいと年間50コマに及ぶ「商品開発授業」を開発。すでに、十勝の池田高校で実践しているカリキュラムで、一方的に教えて育てる「教育」ではなく、考える力を育む「考育」を提唱しています。真浦さんは「商品開発」を授業に取り入れることについて、十勝の産業の流れがわかる、地域の課題を知り解決するために地域人と交流を持てる。原価計算やマーケティングなどの経営学など、社会に出た時に必要な、ほぼ全てのスキル向上を目指せると熱くプレゼンしました。

事務局サポーター:廣田さん(帯広信用金庫)
「池田高校の授業に参加しました。授業に関わる先生、木工の事業者、木材提供者(役場)など、すでに生徒たちは多くの大人と関わっていました。教育ではなく考育が広がれば、ビジネスの現場に指示待ち族がいなくなると思いました」

「十勝フロンティアスピリッツ」

チーム名十勝開拓魂
リーダー宮澤嘉裕さん
メンバー磯野巧さん/川原由敬さん/鈴木可奈さん

最後は、地方起業に多いアルコールビジネスです。ワイン造りを経験した池田町役場を退職し、宮澤さんが挑むのは、十勝初のスピリッツ蒸留所でした。
スピリッツとは精神。酒の世界では蒸溜酒のことを指します。宮澤さんが製造するのはスピリッツの中のジンとアクアビット。中でも、注力するのがアクアビットと呼ばれるじゃがいもを主原料とした蒸留酒です。北欧ではメジャーですが、日本ではほぼ認知度はありません。
宮澤さんは「大好きなスピリッツを事業化しようと考えた際に、十勝が日本一の生産量を誇るじゃがいもが主原料のアクアビットしかないと考えました。さらに、十勝のアクアビットをつくることで事業を展開していく時も他の農産物を活用したスピリッツが作れます」とし、十勝に新しい文化「とかちスピリッツカルチャー」を創造することを念頭にビジネスを拡大させると語りました。
すでに、製造技術研修を受講中で、近いうちに「十勝スピリッツ蒸留所」を立ち上げ、十勝産ボタニカルの風味を生かした独自ブランドの「クラフトジン・OAK(オーク)」と「アクアビット・炎」に加え、日本初となるじゃがいもを使用したアクアビットの製造と2023年4月の法人設立を目指すそうです。

事務局サポーター:山川さん(事務局推進チーム)
「2回目のTIP参加となったリーダーの宮澤さんは、十勝にスピリッツカルチャーを広める決意ができたのだと思います。メンバーも『一緒にやっていきたい』という気持ちの強い良いチームだと思いました」

7つの事業構想を米沢帯広市長が総評

総評で米沢則寿帯広市長は、「今回の事業構想が実現されれば、十勝がより豊かになるためのバリエーションが広がることを感じました」とした上で、各チームに総評を伝えました。

米沢則寿帯広市長

【グッドカーリング】
リーダーの大野さんは、元帯広市役所の職員でした。「十勝のカーリングを世界に広めたい」と熱く語り卒業された日を今でも覚えています。エンターテイメントを駆使して、大野さんにしかできないビジネスモデルだと思います。「やりたい」をビジネスに結びつけるのは難しいですが、実現してほしいです。

【わんおぺfamily】
子育てをひとりで頑張っている方々が互いに集まって、悩みを共有しながら楽しめるイベントを作っていくということに共感しました。例えば、頼る人がいない移住者に対して、発信できたら十勝地域の優位性に結びつくとも思いました。

【トカチメイド(tokachimade)】
十勝におけるスイーツの情報発信に着目して、そこからビジネスに発展させる十勝らしい構想です。すでにスイーツの魅力を情報発信してきた、リーダーの西島さん。十勝の持っている資源(小麦や小豆などスイーツの原材料)とスイーツを上手く繋げることで、どんな波及効果を生み出すのか可能性を感じました。

【超十勝美食倶楽部】
会員制の特別な食事を企画するというシンプルですが心躍る構想です。何より、十勝を世界に通用する美食の街にするというのが嬉しいですね。リーダーの杉山さんは、十勝産小麦100%のパンを製造・販売してきたという実績もあり説得力がありました。

【TO勝ち・体づくり】
折笠さんは、トレーナーとしての実績に基づき、十勝の食でアスリートを支援し、運動を通して農業生産者を応援するという構想でした。若い世代への食育、高齢者の運動維持など、将来、オリンピックや世界大会に出場する選手が「ユース時代に十勝の食材を食べた」と言ってくれると、地域の誇りにつながるという期待の大きな構想です。

【学び舎とかち商品開発ねお】
リーダーの真浦さんが、自身の体験から「考える力をつける授業が必要」と構想したことがわかりやすいですね。予測不可能なことが起こる現代において、問いを立てて、乗り越える力を養うことは本当に重要かと思います。これからの時代を生き抜くためのプログラムとして浸透してほしいと思いました。

【十勝開拓魂】
十勝になかった酒造りと文化をつくる構想はとても魅力です。私個人も過去に欧州駐在を経験し、北欧出張の際は、シュナップスというジンと同じような蒸留酒を飲んだのを思いだしました。柏の葉やじゃがいもを原料として使用することで十勝らしさを感じます。時代にマッチする事業だと感じました。

最後にすべてのチームに向けて、「これからは、事業構想を積み上げていく過程で困難を乗り越えたチームメンバーと一緒に事業化へ向けて取り組んで行ってほしい。それは容易な道ではないが、各種地元の支援機関と連携しながら進んでほしい。帯広市としても全力で応援していく」とエールを送りました。

TIP8参加者・関係者による記念撮影

今後、TIP8期の7チームは主催者の帯広信用金庫や十勝19市町村、野村総合研究所、とかち財団などの支援機関の力を借りつつ、事業化に向けて進んでいきます。現在の58事業、13法人からどこまで増え、十勝にこれからどのようなイノベーションを巻き起こしていくのか楽しみです!