参加者の事業成長の意欲を刺激し、参加者同士の交流から様々な事業協創を生み出すことを目指して開催された「KAIKON -開墾-」。
2日目の10月16日(木)は、インザスイートを会場に、カンファレンスイベントが開催されました。
後編では、KAIKON COLLABORATION PITCH、脈でつながる1on1 HeartBiz交流会、トークセッション2、ミートアップの模様についてお届けします!
KAIKON COLLABORATION PITCH
十勝の価値をアップデートする最新のソリューションを紹介する「KAIKON COLLABORATION PITCH」。登壇者と参加者間の事業連携の創出を目指し、今回は東京、札幌、十勝から7社が登壇しました。
それぞれ7分間の持ち時間の中で、事業概要や現在の取り組み、これから目指す事業の方向性について紹介するとともに、参加者に向けて連携・協力を呼びかけました。
・株式会社e-lamp.(東京都)山本愛優美さん
人々の脈拍情報を活用したコミュニケーション促進事業を実施。「e-lamp.ONEシリーズ」「tokimeki card」をはじめとするコンシューマ向け製品の開発・販売や、脈拍マッチングサービス「ematch」にて、心拍同期率を可視化する「HeartDate/HeartBiz」を展開。恋愛や結婚支援、ビジネスマッチングの分野での活用や、大規模な商談会の場での活用をPRしました。
・クオンクロップ株式会社(東京都)黒木花菜さん
一次産品や食品の環境負荷の影響をさまざまな指標でデータ化し、AIを活用して商品の付加価値向上を図っています。
「Myエコものさし」は、10を超える食品エコ指標により、食材や食品のエコスコアを可視化。レポート作成や新商品開発、販路開拓などを通じて、攻めのサステナビリティによる価値創出を支援しています。ピッチの中では、様々な導入事例が紹介され、観光や食の魅力を共に創り出すパートナーの募集を呼びかけました。
・寿循環合同会社(帯広市)佐藤寿樹さん
2025年4月に新規設立したスタートアップ(北大発認定スタートアップ企業)。循環型社会の実現と脱酸素をテーマに据え、農業残渣を燃焼可能なバイオマスバーナーを利用した脱炭素循環型の農業システムの普及を目指しています。
また、燃焼時に未燃炭として発生する農業残渣由来のバイオ炭の製造販売を行い、バイオ炭の農業利用を通じて脱炭素・循環型社会の実現に取り組んでいます。
・株式会社スマヒロ(帯広市)北川宏さん
十勝を拠点に地方課題をデジタルで解決するメディアプラットフォーム会社。十勝の観光・暮らしを発信する「MATOKA」や、移住・求人を支援する「TCRU」を運営しています。
今後も観光や暮らしの分野で地域の課題解決につながる新たなデジタルプラットフォームを創出し、十勝モデルを全国へ展開し、「地域OS化」の実装を目指しています。
・萩原建設工業株式会社(帯広市)高嶋利直さん
創業は大正7年。道東・道央地区を中心に土木工事や建築工事を請け負う総合建設業。2022年からはコーポレートスローガン「未来を築く情熱を、挑戦に。」を掲げ、革新的な技術と地域貢献を通じて新たな価値を創造し、共に成長する企業を目指しています。
ピッチの中では、建設の枠を超えた新規事業への挑戦をアピールしました。
・株式会社ビーフソムリエ(東京都)松岡俊樹さん
生産者が理想の牛を育て、消費者が自分好みの牛肉を味わえる社会を目指し、「B-som診断」のサービスを提供。肉用牛の生体情報を数値化し、従来の基準にとらわれない新たな視点から「目に見えない品質」を評価し、出荷までに目標とする肉質を実現するための明確な方針をサポートしています。
ピッチの中では、生産者と消費者をつなぐ世界初の科学的診断サービスの導入について会場に呼びかけられました。
・ミチタル株式会社(札幌市)小島颯太さん
森林循環と経済性の両立を目指し、国産、とりわけ北海道産の木材を用いて洋酒樽の製造・販売事業を行うと共に、今後はメンテナンス・リユース事業の展開を目指しています。職人の技を再現する独自の技術開発を武器に、蒸留所やワイナリー、飲食店、そして個人の手元にまで樽の魅力を最大限に届ける事業への思いと、未知への挑戦を参加者に対し広くアピールしました。
セッションでは地域資源などを有効に活用する独自性の高いソリューションが次々と披露され、終了後には参加者と熱心に交流を行う様子があちらこちらで見られるなど、登壇者と参加者との活発な交流が生み出された熱量の高いセッションとなりました。
脈でつながる1on1 HeartBiz交流会
ピッチセッションい引き続いては、株式会社e-lamp.の山本愛優美代表と津田翔也さんの進行のもと、参加者同士の会話の中で心拍を計測し、お互いの心拍のシンクロ度合いからマッチングをサポートするematchシステムを活用した実験型セッション「脈でつながる1on1 HeartBiz交流会」が実施されました。
ematchシステムでは、心拍計測バンドを装着した参加者同士が会話相手と様々なコミュニケーションを行います。そして、会話の終了後に参加者各自が事前に登録したメールアドレスに会話のサマリーレポートが届き、両者の心拍シンクロ率や会話の議事録、今後のビジネスにつながるためのネクストアクション提案などを確認することができるというものです。
当日は5分間の会話×3回のセッションを実施。心拍の計測をしながらの会話という新しいコミュニケーションツールは参加者に驚きを持って迎えられるとともに、会場は大いに盛り上がりました。
このセッションでは、思いも寄らなかった方との新たな出会いや、そこから新たな事業共創の形に発展したという方も多かったのではないでしょうか。
トークセッション2:その壁、どう乗り越えた?実践者が語る突破の条件
そして、いよいよ「KAIKON -開墾-」の最終セッションとなるトークセッション2では、事業運営に当たって立ちはだかる「障壁」をどのように捉え乗り越えるか?というテーマに対し、登壇者から突破力や変革のヒント、実践的なアプローチを探りました。
・株式会社ファームノート 代表取締役 小林晋也(帯広市)
1979年生まれ、北海道帯広市出身。
「世界の農業の頭脳を創る」という想いから2013年に株式会社ファームノート、2016年にファームノートホールディングスを創業。
同年、日経ビジネス「次代を創る100人」に選出。
2019年に日経BP「第17回日本イノベーター大賞・日経ビジネスRaise賞」、
第5回「日本ベンチャー大賞・農林水産大臣賞(農業ベンチャー大賞)」
2020年に第8回「ものづくり日本大賞・内閣総理大臣賞」を受賞。
・側島製罐株式会社 代表取締役 石川貴也(愛知県)
1986年名古屋市生まれ。日本政策金融公庫で約10年勤めたのち、先代である父親と事業承継にかかる念書を取り交わし、2020年に側島製罐へ入社。経営理念すらなかった老舗缶メーカーにて「世界にcanを」「宝物を託される人になろう」というミッション・ビジョンを掲げ、下請けレガシー企業を老舗ベンチャーへ改革中。23年に同社代表取締役に就任。「社長」という肩書は無くし、社員が給与を自分で決める「自己申告型報酬制度」を導入するなど、自律分散型の組織づくりを通じた新しい時代の中小企業の在り方に挑戦している。
・(モデレーター)公益財団法人とかち財団/LAND 髙橋司、小田晃一郎
事業を進めていく上での「壁」とは何か?
事業を進めていく中で誰もが直面する「壁」。
それは、乗り越えるべき障害なのか、それとも自らがつくり出している「思い込み」なのか。
モデレーターの髙橋さんは、この切り口を基に、事業創出や組織改革といったテーマに挑んでいる二人の経営者へ「壁」との向き合い方を問いかけました。
「たとえばモノは上から下に落ちる。それを当たり前だと思っている時点で、私たちは『上に上がる』ことを諦めている」
小林さんは、そんな日常の中の「思い込み」こそが、私たちを縛る見えない壁だと指摘します。
続けて、「経営はトレンドや風を読むことが重要。だが、風そのものを起こすことはできない。風が吹いた時にそれに乗れるかどうかが鍵になる」と、事業環境をどう捉え、どうアクションを起こすかについての重要性を語りました。
この「思い込み」という視点は、地域での事業展開にも関係していきます。
小林さんは、北海道・帯広という地域にいることで「市場を限定して考えてしまうことも壁になり得る」と続けます。
「本来はもっと自由に考えていい。風が吹いても、心の枠を狭くしていたら乗ることができない」
その言葉には、固定観念を外し、思考のスコープを広げることの大切さが込められていました。
株式会社ファームノート 小林晋也氏
一方、石川さんが語ったのは、「自分自身が壁だった」という気づきでした。
「経営者は孤独な存在だというイメージを抱いていて。自分も一人きりで進まなければいけないと思い込んでいました」
しかしある時、そうした固定観念に疑問を持ったといいます。
「経営者が楽しくなければ、会社も楽しくならない」
経営者は孤独でなければならないという思い込みを手放した時、前に進みはじめたと言います。
そして、自分が楽しみながら経営することが、組織を活性化させる第一歩だと語りました。
二人の言葉に共通していたのは、「壁」とは外部からもたらされる障害ではなく、「内側の思い込み」であるという視点です。
壁を乗り越えるとは、自分の思考を疑い、もう一歩進んで自由に発想すること。
その先にこそ、新しい可能性と変革のチャンスがあるのだと教えてくれました。
どのように「思い込み」に気付き、どう対処するか?
小林さんは、2016年頃にコーチングを受けていた時期を振り返ります。
ファームノートを立ち上げて4年ほどが経ち、「どうすれば売上を伸ばせるのか」と悩んでいた当時、うまくいかない理由を「社員のせい」と外に求めていたといいます。
しかし、コーチングを通して「うまくいかないのは自分のせいだった」と気付いてからは、「すべての原因は自分の中にある」と捉えるようになり、それからは何事も自分と向き合う姿勢を大切にしていると言います。
一方の石川さんは、「違和感を大事にしている」と語りました。
「経営者は孤独だ」「評価する立場だから仕方がない」といった「もっともらしい常識」を前にしても、どこかに生まれる違和感を見逃さないようにしているそうです。
「世の中の仕組みを当たり前と思わなくていい。それを変えられるのは自分しかいない。だからこそ、自分の軸で考えることが大切」と強調しました。
そして、「自分が何のために事業をしているのか」を問い続けることが、思い込みから抜け出す一歩になると言います。
「世の中を良くしたい」という原点に立ち返り、慣習や常識に縛られず、自分らしい経営を貫くこと。
それが、思い込みを超えて新たな道を切り拓くための鍵なのかもしれません。
側島製罐株式会社 石川貴也氏
参加者に向けたメッセージ
セッションの締めくくりとして、登壇した二人から参加者へ向けたメッセージが語られました。
小林さんは、帯広という地域の可能性に触れます。
「帯広は特殊な町。経営者にはおもしろい人が多く、開拓のコンテキストが自然と流れている。だからこそ、もっと世界にはばたく場所になってほしい」と力を込めました。
石川さんは、自分たちの行動の意味について語ります。
「自分たちの世界は自分たちにしか変えられない。違和感に向き合い、流されずに問いと真剣に向き合う人が増えれば、世の中は自然と変わっていくはず」と語ります。
「もっと楽しい世の中をみんなでつくっていきたい」と、前向きな希望を参加者に託しました。
本セッションを通じて浮かび上がったのは、経営の課題や壁は決して外部だけにあるのではなく、自らの元々の思考・思い込みや固定観念に起因することが多いという点です。小林さんと石川さんの経験に触れることで、固定観念に気づき、自分の軸で行動することの重要性が伝わるセッションとなりました。
ミートアップ
カンファレンスイベント本編が終了後、総勢70名が参加してのミートアップが行われました。
参加者同士の活発なやりとりが行われたカンファレンスイベントの熱気そのままに、登壇者と参加者、また参加者同士で熱心な意見交換が交わされ、今後の事業連携の創出への可能性に満ちたマッチングが数多く生み出されました。
まとめ(参加者の声)
参加者の皆さんからは、
「全体的に経営者の内面についての話が聞けて、非常に興味深かった」
「ビジネスという枠を超えて、登壇者の方々のひととなりを感じられる内容でとても良かった。インスピレーションという観点で大いに刺激になり、起業へのモチベーションが上がった。またぜひ参加したい」
「キーノートやトークセッションについて、登壇者の経営者としての『やり方』よりも『在り方』に触れたり、自分の『当たり前』や『思い込み』に気づき、乗り越えていく様子をお聞きしたりして、自分の中に内省が起こり、意義ある時間となった」
「他の参加者の方と交流するきっかけがあって良かった。中々周りに知り合いがいない環境でしたが、交流に繋がった」
といった声が聞かれました。
各セッションで語られた挑戦のストーリーや行動変容に向けたマインドセットの変革といったテーマから、参加者のモチベーション向上や新規事業創出へのインスピレーション・刺激がもたらされ、また参加者同士や登壇者との交流から様々なマッチングが発生し、十勝の未来を切り開く今後の具体的なアクションを喚起するイベントとなったのではないでしょうか。
「KAIKON -開墾-」にご参加いただいた皆さんの「行動変容」が、やがてその周りの様々な方々にポジティブな影響を与え、十勝全体から意欲的なアクションや挑戦が続々と生まれてくるという未来につながるよう、LANDではこれからも参加者の皆さんの活動を応援していきたいと思います!
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