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十勝発、未来を切り開くビジネスイベント「KAIKON -開墾-」(2025)レポート【中編・カンファレンスイベント】

参加者の事業成長の意欲を刺激し、参加者同士の交流から様々な事業共創を生み出すことを目指して開催された「KAIKON -開墾-」
2日目の10月16日(木)は、インザスイートを会場に、カンファレンスイベントが開催されました。

参加者からのあたたかい拍手とともに、会場の熱量もアップ。十勝管内はもちろん、十勝管外からの参加者の姿も多数あり、十勝の未来への期待に満ち溢れた雰囲気の中開幕しました。

中編では、キーノートスピーチトークセッション1の模様についてお届けします!



キーノートスピーチ:「世界の食をもっと楽しく」漁師との出会いから始まった持続可能な食の革命


「KAIKON -開墾-」のイベント主旨を象徴するキーノートスピーチは、株式会社フーディソン代表取締役CEO 山本徹さん

水産のスペシャリストではない山本さんが、どう事業を開拓していったのか。
さらには自身の内面を成長させるために、自らをどのように開墾していったのか。
参加者一人ひとりが自らの在り方を見つめなおし、未来の希望を見据えるきっかけとなるスピーチとなりました。

・株式会社フーディソン代表取締役CEO 山本徹(東京都)
1978年埼玉県生まれ。北海道大学で機械工学を学び、卒業後は不動産ディベロッパーの株式会社ゴールドクレストに営業職として入社。株式会社エス・エム・エスへ創業メンバーとして2003年4月に参画し、ゼロから上場後のフェーズまで人材事業のマネジメント、新規事業開発に携わる。岩手県で出会ったサンマ漁師との出会いをきっかけに、水産業の現状に危機感を覚え、2013年に株式会社フーディソンを創業。代表取締役CEOに就任。2022年東証グロース市場に上場。



社会の変化に新しい仕組みをつくる


株式会社フーディソンは、水産業を中心に漁業の構造改革や生鮮流通の再構築を目指して事業を展開している会社です。
「世界の食をもっと楽しく」をミッションに掲げ、主な事業として、飲食店向け生鮮品EC「魚ポチ」、個人向け鮮魚ショップ「sakana bacca」、食業界に特化した人材紹介サービス「フード人材バンク」を運営しています。

大学在学中から起業を見据えていた山本さんは、「モノを売る力があれば、どんな経営にも役立つ」という考えのもと、卒業後は営業のスペシャリストを目指して不動産業界に就職。
その中で多くの出会いに恵まれ、介護事業や食の分野へと活動の場を切り拓いていきました。

「ビジネスは、誰も必要としていないところから生まれるものではなく、社会が変化する中で生まれるもの。これまでの仕組みがうまく機能しなくなり、ほころびが見え始めたところにビジネスチャンスがある」と話す山本さん。
新しい社会システムを創り出す挑戦はもちろん簡単なことではなく、困難や失敗を伴うもの。それでもその挑戦は、「人生をかけるに値する価値のあるチャレンジ」だと言います。

「いずれ社会のシステムとなり、必要不可欠なものとなる。そう思い直すとエネルギーが湧いてきます」


漁師の一言が原点に。一次産業の現場から見えた課題を、ビジネスで解決する


2012年、山本さんは出張で訪れた岩手県でサンマの漁師に出会いました。
「当時1尾100円程で販売していたサンマを、その漁師さんは1キロ10円から30円で卸していました」。魚は私たちの暮らしに身近な存在なのに、一次産業の現場では「辞めたい」「継がせたくない」という声が上がっている。この現実に、危機感を覚えたと言います。

「もしこうした課題を解決できるようなサービスをつくれたら、きっと多くの人に使ってもらえるのではないか」
そう考えたことが、起業の原点となりました。

当時の水産流通には多くの課題がありました。
参入当初は「インターネットを活用すれば効率化できるのでは」という仮説からのスタートでしたが、実際に学びを重ねながら少しずつ事業の精度を高めていきます。
「最初から完璧なサービスを作るのは無理だし、そうしない方がいいと思っています」。現場での経験と気づきを積み重ねながら、構造的な課題解決へと進化させ、そこから隣接領域へと拡大していくのが山本さんのスタイルです。

「魚ポチ」のサービスは、最初はECサイトを作らず、FAXで受注していました。「提案する商品の差別化に力を注ぎ、客数が増えたところでシステム化を進めました」。
「目利きのプロでなくても対応できる仕組みを作り上げれば、人件費率の低いモデルができます。それを中小企業向けから大企業、そして海外へと拡大していきました」

2013年の創業から12年が経ち、売上は63億円超の規模へと成長。
「社会に必要不可欠なサービスをつくることこそが、自分自身と会社を動かす原動力になっています」と山本さんは語ります。


恐怖を越えて加速する。自分を「開墾」し続けること


「恐怖とは、加速の中にある」
ある経営者との対話から印象に残った言葉だと、山本さんは話します。

「スカイダイビングをした時、飛び降りた直後は恐怖でいっぱいで、加速していく間も怖かった。でも、一定の速度になると、周りの景色が見えるようになった。そう言っていたんです」
「変化を嫌う」という言葉がありますが、山本さんはその話を聞いて、「変化とは、実は“加速”なのではないか」と考えるようになったと言います。

誰しも変化の局面では恐怖を感じるもの。
しかし、「恐怖は加速の中にある」と理解し、その恐怖を乗り越えた先には、これまで以上のスピードと成長が生まれると山本さんは捉えています。

自らの内面を開墾する


創業初期の企業は仕組みが整っておらず、経営者の影響力が大きいため、それが推進力にもなれば、阻害要因にもなり得ます。
だからこそ、自分のメンタルモデルを理解し、うまくコントロールすることが重要なのだと山本さんは話します。

「感情が揺れたときは、“なぜそう感じたのか”を自分に問いかけ、過去をたどって自分への理解を深めています」。時には両親と話したり、周囲からフィードバックをもらうことで、自分自身を正しく見つめ、周囲とのコミュニケーションに生かしているそうです。
自己を正しく認識することは、自分らしさを発揮していくことにもつながっています。

「僕は最初からスペシャリストとして始めたわけではありません。業界理解も十分ではなかった。でも、“始め方と進め方”を間違えなければ、事業は生き続けることができます」

経営者として大切なのは、事業を推進するだけでなく、自分がどんな事象にどう反応するかを見つめること。業界を開拓するのと同じように、自分自身も開墾し続けていきたいとメッセージを送ってくれました。



トークセッション1「見えない未来を切り拓く ~変化の時代に求められる行動変容の秘訣~」


トークセッション1では、柔軟な発想のもとに新たな事業展開に活路を見出す登壇者の感性・思考パターンを探り、その先に起こる「行動変容」がもたらすイノベーション・事業成長の可能性にフォーカスしたセッションが展開されました。

・株式会社スマイルズ代表取締役社長兼CCO 野崎亙(東京都)
京都大学工学部卒。東京大学大学院卒。2011年スマイルズ入社。すべての事業のブランディングやクリエイティブの統括に加え、「100本のスプーン」のリブランディングや新業態開発なども行っている。また、入場料のある本屋「文喫」や東京ミッドタウン八重洲内の「ヤエスパブリック」など外部案件のコンサルティング、プロデュースを手掛ける。

・DAYLILY JAPAN株式会社代表取締役 小林百絵(東京都)
台湾発 漢方のライフスタイルブランド DAYLILY(デイリリー)代表取締役社長。1992年帯広市出身。慶應義塾大学大学院でデザイン思考とブランディングを学んだのちに株式会社電通に入社。退社後、大学院が一緒だった台湾出身の女性とともに、DAYLILYを起業。現在は、国内に5店舗と台湾に1店舗を構える。2025年8月にクラシエ株式会社に子会社としてグループイン。

・(モデレーター)公益財団法人とかち財団/LAND 髙橋司、小田晃一郎



「現在」の延長線上にある「未来」は正解なのか?


事業やビジネスのスタイルは、「確立する」ものか、「崩していく」ものか。
目的に向かって一直線に進むだけではなく、その過程で探索の幅を持つことで見えてくる未来のヒントを探ります。

セッションでは「『現在』の延長線上にある『未来』が果たして正解なのか?」という問いを起点に、事業のあり方や働き方、そして「余裕」を持つことの価値について語られました。
目的や効率だけを追うのではなく、あえて寄り道をしたり、遠回りをすることにこそ、次の可能性が潜んでいるのではないか?
トークセッション1では、そんな思考の転換を促す対話が展開されました。

「何事もオルタナティブに」という考え方が強いという野崎さん。
「目標は高く掲げる」と言われることが多いなかで、あえて「目標は低く」と語ります。
「目標は目指すものではなく、通過点であるべき。目標を早い段階で達成して、残りの時間で新しいことにチャレンジしています」

また、仕事の中で意識しているのは「意味のある遊びをつくること」
コンサルやプロデュースは「変化をもたらす仕事」。
そのためには目的だけでなく、「余計なこと」を仕込む余裕が必要だと語ります。

小林さんは、創業からの6年間や、クラシエ株式会社にグループインをしたことを振り返りながら、「紆余曲折を経て、それでもブランドを信じ、その先にある未来を信じ続けてきた」と語ります。

「ブランドをはじめた当初から、いずれはどこかと一緒になってブランドを大きくしていきたいと、未来を思い描いていました」
ブランドを確立させる過程では、こだわりすぎず軌道修正をしながら進んできた小林さん。「小回りが利くのがBtoCのいい所。いろいろ試しながらブランディングを進めました」。

株式会社スマイルズ 野崎亙氏



十勝の可能性をどう捉えているか?


野崎さんは「十勝では根本的な食の物差しの水準がまったく違い、さらには広い大地があるからこその世界観があることに可能性を感じる」と話します。
その十勝のスケールから感じ取られる「遊び・余計・余裕」は、東京ではまず巡り会うことができないこと。
「ここではゆとりが当たり前に感じられる。それが十勝の価値ではないか」と指摘する一方で「ゆとりが足りているからこそ、別のことを希求しているのかもしれない」と考察します。

帯広出身の小林さんは、「芝生が広がる緑ヶ丘公園で、のびのびと過ごした子どもの頃の記憶」を語り、それを十勝ならではの体験として大切にしていると話します。
「広々とした場所でおいしいものを食べて過ごす。そんな体験ができる場所がもっと増えたらいいと思います」

さらに、「遊び・余計・余裕」のキーワードから、大学院での学びを今も大切にしていると話します。
「デザイン思考の授業で、いちばん大事なのは『身体性』であると教わりました。頭で考えて得られることよりも、身体性を通じて得られたことがいちばん人間にとって価値があり、心が動かされると学んでからは、散歩をしたり、自然に触れる時間を大切にしています」

ここでモデレーターの高橋さんから、対極にあるイメージの「余裕」と「合理」についてどう捉えているかという質問がなされます。

「豊かさは、合理の先ではなく余裕の先にある」
これは野崎さんの印象的な一言です。

合理化は効率を求めるためだけではなく、「余裕」を生み出すためにもある。経営者の最終的な目標は、人生や社会を豊かにすること。
一見「余計」に見えるその行動が、結果的に学びとなり、未来の合理性へとつながっていく。「意地でも余計なことをしている」と笑う野崎さんの姿に、挑戦を楽しむ強さが感じられました。

また、小林さんは、小さな頃から大好きな場所である美術館や、散歩をすることも、「全部仕事に直結している」と話します。
「そこで感じることや得られるものを大切にしたいと考えています」

DAYLILY JAPAN株式会社 小林百絵氏



「自分」をどう知るか?


これまで様々な経営者の方から、新規事業の相談を多く受けてきたという野崎さん。
多く寄せられるその悩みとは、社員のモチベーションや自主性を高めたいというものです。

実は、「やりたいことをやる」タイプの人は、全体のごく一部。「頼まれたらやる」や、「決まったからやる」など、人にはそれぞれのモチベーションの型があり、それは9つの類型に分けられると分析します。

「自分と他人は違う」という前提を知り、自分のモチベーションの型を理解すること。あとは、モチベーションが上がる状況に自分や部下を持ち込むだけで、円滑に仕事が進んでいくと言います。

ちなみに野崎さんは「頼まれたらやるタイプ」。予定はスタッフがすべて組み、自分に頼まれる形に導くことで自らのモチベーションを上げているのだそう。

一方、小林さんは「やりたいことをやるタイプ」
「DAYLILYを始めようと思ったとき、椎名林檎さんの『人生は夢だらけ』という曲を聴きました。その中に『この世にあって欲しい物を作るよ』という歌詞があって、『漢方が今の世の中にもっとあってほしい』と強く思ったんです。そこからDAYLILYを立ち上げました」。自分の情熱を起点に行動するスタイルです。

最後に、モデレーターの小田さんは「自分を知り、今日、明日から行動を変えていくということを少しずつ意識していくことで価値ある未来につながっていくのではないでしょうか」と語り、セッションは希望に満ちた言葉で締めくくられました。


まだまだ続くカンファレンスイベント!
後編では、KAIKON COLLABORATION PITCH、脈でつながる1on1 HeartBiz交流会、トークセッション2、ミートアップの模様についてお届けします!


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